同友会ニュース−活動報告

2014年度 全県経営研究集会【「人を生かす経営」で激変する環境を乗り越えよう】

「人を生かす経営」で激変する環境を乗り越えよう ~めざそう!中小企業が主役の時代を~

 11月19日、2014年度全県経営研究集会が開催され379名の会員が埼玉グランドホテル深谷に集いました(会員333名、ゲスト31名、オブザーバー15名)。
 来賓の大熊 章・関東経済産業局産業部担当次長は「地域の中小企業の発展なくして日本の経済再興はない。取り巻く環境は厳しいが、今後の経済対策など政策を活用いただき、また、今日の学びを持ち帰り、自社の発展に役立てていただきたい」と話され、石川佳孝・㈱日本政策金融公庫さいたま支店支店長兼中小企業事業統轄からは「厳しい状況の中でも、足元をしっかりと見つめ、必ずチャンスはあるという前向きな気持ちで事業に向かって欲しい」激励がありました。基調講演の概要を以下に紹介させていただきます。

【基調講演】「労使コミュニケーション」で人を生かす経営を~実践のために不可欠な5つの要件とは~

  【講師プロフィール】

呉 学殊(オウ ハクスウ)氏
独立行政法人 労働政策研究・研修機構(厚生労働省管轄)
主任研究員

1962年生 韓国出身
1997年3月東京大学大学院博士課程人文社会系研究科修了
2001年3月東京大学大学院博士学位取得:社会学博士
専門分野:産業社会学・労使関係論
職歴:1997年4月より日本労働研究機構に就職し現在に至る

日本の危機はもはやマクロ経済政策では克服できない

   日々刻々と変わる企業環境の中で、努力される社長の皆様には敬意を表します。困難な中で奮闘される社長さんがいるからこそ、この国の経済が保たれているのだと確信しています。会社が維持発展するために、社員が社長と方向性を一つにし、高いモチベーションをもって働くのに労使コミュニケーションは非常に重要だと思います。
 近年、日本の良さが失われつつあると思われるのですが、これには原因があります。1991年にバブルの崩壊があり、深刻な問題が発生し、今に至っているのです。深刻な問題とは、低い経済成長率、少子高齢化、財政赤字、年金システムの危機、非正規労働者割合の増加、賃金の減少などさまざまです。
 どうすればこの問題をクリアすることができるのでしょうか。過度にマクロ経済政策に期待しすぎるのは危険だと考えます。人の健康に例えると、医者が治療によって病気を治すようなもので、他の身体能力も上がるかといえばそうではないのです。個々の企業が社長さんを含め、社員さんの能力を高める努力をしないと、この国はよくならないし、根本的な解決もできないのです。社員一人ひとりが能力をつけているか、足元を確認し能力を高めていくようにすることが必要で、その際、労使コミュニケーションが非常に重要だと思うわけです。

労使コミュニケーションは経営資源

   会社生活というのは社長の指揮命令に服従することで成り立ちますので、経営者の考え方に影響されることが多いです。従業員は、労働者の権利・義務において、特に義務についての意識が高いです。
 会社から命令されればなんでも従わなくてはいけないと過度に思っている傾向があります。そのようなことからも、経営者の考え方は重要です。
 そのような中、人を生かす経営とは『経営者の権利であり、義務でもあるので、社員の能力・可能性を高めてそれを最大限発揮させて、企業の発展と社員の自己実現、さらには持続可能な社会の実現に向けて行われる経営者の営みである』と私なりに定義しました。どうすればこのような人を生かす経営ができるのか、ということについて労使コミュニケーションという観点からお話ししたいと思います。
 労使コミュニケーションは経営資源であると、私は考えています。従来は労働組合の問題などもあり、労使関係の安定のために必要だという、消極的な考え方でありました。しかしながら、これからは付加価値を高める経営資源であると考えているのです。

経営資源性アンケート調査から見えてきたもの

 私は2006年以降、中小企業の労使コミュニケーションの実態を明らかにするために、アンケート調査を行っています。
 この結果、肯定型ほど経営情報(役員報酬や人件費、利益など)の開示率が高く、経営危機の経験度、従業員管理上の困難度が低く、従業員の経営への協力度が高いことがわかりました。  

 

 これをもとに2012年、同友会会員企業と非会員企業との違いについてアンケート調査を行いました。(調査対象企業15393社 回収率9.9%)経営危機にあう割合は両者の間ほとんど違いが認められなかったのですが、同友会会員企業が非会員企業より早めに経営危機を克服しました。その要因としては、危機克服のための会社との一体感を持つように促すとともに企業業績の実態を説明し、それに「雇用は守る」と従業員を安心させて、経営に対する意見を求める等の労使コミュニケーションが挙げられます。また、経営情報の開示については同友会企業の数値が高かったですが、特に売上高、利益、人件費、役員報酬等の金銭的情報は特にそうでありました。そして、率直にものがいえる、社員が自主性を発揮する等の職場雰囲気も良好であり、能力開発へ機会付与、社員への権限委譲等の社員活用も積極的でありました。
   

 しかし、事例調査で見られた同友会企業の素晴らしい労使コミュニケーションの経営資源性の内容に比べると、同友会会員企業と非同友会企業との差は思ったほど大きくはなかったのですが、それには、残念ながら同友会企業の中でも先進的な労使コミュニケーションが、まだ積極的に実践されていないところも多くあっての結果だと思います。

他では育てられない人も採用し育てることの意義

 

 

 

 2010年から3年間、ヒアリング調査として、14の同友会会員企業を訪問しました。
 労使コミュニケーションの経営資源の内容は何であるか?企業内での実態を直接お聞きしたのです。それを3つの効果に取りまとめることが出来ます。
 第一は企業内効果です。これほど厳しい状況の中で、社員が増えていて、社員の生産性が上がり定着率も上がります。企業の維持・発展に貢献しています。
 第二は労働者効果です。労働者が自分の可能性を最大限発揮し、この企業に働けてよかったと思えること。会社は経営者の指揮、命令に従うところではあるのですが、それを受動的に、言われたままやるのと、自分なりに社長の意思を理解し能動的に行うのでは、生産性が違います。調査対象企業では能動性が多く見られました。なぜ、この自己実現ができるか。それは皆さんが作られている経営指針の中に社員の自己実現につながる内容が明記されているからです。

   第三は企業外効果。すなわち、社会的資源性です。中小企業の採用は大手のように人材を選び抜くわけにはいきません。そういう中で、採用した人を育て上げるということをしている。たとえばスリッパをはいて採用面接に来たような人を、中核になるようにまで育て上げる。その人が採用されなかったら生活保護を受ける可能性さえあったのですが、採用・人材育成により税金をたくさん納めるような人となったという社会的意義は大きいです。中小企業、その中でも特に同友会の社長がやっている人材育成は大企業とは次元が違うものだと私は思っているのです。社会的に重要な役割を、同友会企業は人材育成の面においても果たしているのだと思います。
 ヒアリングをした企業の中には「新規採用をするには大変な状況だが、多少無理をしてでも地域の若者の雇用を守る」という企業もありました。こういうことを見てみると、同友会企業は企業の外にもつながる効果を出しているのだと感じます。なぜそういうことができるのか、そのもっとも重要なことは、労使が社会的な関心や責任をもっているかどうかだと思いますが、それに功を奏したのは労使コミュニケーションだと私は思います。

労使コミュニケーションの要件は3K2S

 労使コミュニケーションは基本要件である3K2S(社長の決断(Ketsudan)、経営情報の完全公開(Koukai)、権限委譲(Kengenijou)、相互尊重(Sonchou)、相互信頼(Shinrai))が満たされればうまくいくのだと思います。もっとも重要なことは第1の要件として『社長の決断』です。たとえば、㈱山田製作所(大阪同友会)では売上の95%がなくなったとき、3Sの必要に気が付き、みんなが議論して、進めることができ、その過程で皆で一緒に考えることが大切だと気付けたのです。
 また、小田原に介護関係の㈱エイチエスエー(神奈川同友会)という企業があるのですが、この社長さんはサラリーマン生活の経験から社会に役立つ企業を目指して創業し、従業員自らが物事を決められるような仕組みをつくりました。社員にお任せするという決断をしたわけです。拓新産業㈱(福岡同友会)の社長は求人をしても人が採用できない時に、有休完全付与、残業なし、週休二日制を決断したわけですが、そうしても会社にマイナスにならないように、共に協力し合い労働の質を高めました。これにより、社員の意識も高まり、社長にも効率的な運営について提案をするようになりました。社内コミュニケーションが深まった事例です。
 鐘川製作所㈱(福岡同友会)では、社長がすべて決めてしまい社員に何も知らせないという状況だったときに経営がうまくいかなかった反省から労使コミュニケーションの重要性に気づき、それを実践する中、今はどんどん成長する企業になりました。

 

 第2の要件は『経営上の完全公開』です。なぜなら、従業員の意見を聞こうとしても、従業員が会社の実態がわからないと、発言しようがないし、また、意味のない発言しかできないからです。
 第3の要件は、『権限委譲』です。従業員は、情報公開とともに会社に対する関心が高まり、会社のために何かをしたいというモチベーションが高まりますが、それができるように従業員に権限を大幅に委譲することが大事なのです。
 第4の要件は、『相互尊重』です。社長は、従業員の存在を認め、その発言を聞き、発言の重みを自分のものと等しく受け止める必要があり、従業員も社長の指揮・命令権を認めて、労使が互いに相手を尊重するのです。
 第5の要件は、『相互信頼』です。相互尊重の上、相手に言動の一致が見られ、また、相手の行動の予見可能性が見えるときに、相互信頼は生まれます。
 同友会では労使関係の対等性を労使見解で謳っていますが、それが私のいう労使コミュニケーションの基本要件3K2Sと相通じるものがあると思います。

社長さんは社員さんの人生を決定づける

 素晴らしい会社からは、経営者の半労働者化、従業員の半経営者化が見て取れます。すなわち、社長がどんな仕事をしていて、報酬はいくらもらっているのかなどについて、公開する。また、その内容について従業員からチェックを受ける。そうすることで、社員は変わるのです。自分のことだけでなく、会社の長期的な発展ということを視野においた中での自分のことを考えることができるのです。経営者が従業員のように、従業員が経営者のように考え、行動するのであります。
 私は同友会ですごいと思える経営者に出会うことができました。
『労使見解』、『人を生かす経営』は宝物だと思っています。そこには、すべて労使コミュニケーションは経営資源であるということにつながるということが書かれています。労使見解を愚直に実践するだけで、労使コミュニケーションの経営資源が発揮できるのです。
 埼玉同友会会員の㈱ハーヴィインターナショナルの切山英彦社長(西部地区会)の会社は調味料を製造・販売していますが。社員にこう話すそうです。
「この調味料は例えばチキンにつけた場合、値段の100分の1。すなわちチキンが100円であれば、調味料は1円だ。しかしその調味料でそのチキンの味が決まる、どれほど大切な仕事か認識してほしい」と。

 私は日本の中小企業の中で、約1%~2%が同友会会員企業だと思います。たったの1%ではありますが、皆様によって、日本の中小企業、また日本社会が決まると思っています。そういう意味で、経営能力はもちろん、それを支えてくれる従業員一人ひとりが生かされないと皆さまの企業はうまくいかないのです。
 私たちは偶然に生まれたのではなく、選ばれて生まれてきました。非常に大切な存在です。そして私たちが一番活動できる場所が会社です。つまり社長によって社員の人生が決まると言っても過言ではありません。社長さんは自ら車を引っ張るだけではなく、従業員にもその役割の一端を担ってもらうことが大事です。大きな権限を与えて、この会社は自分の会社だと思ってもらい、労使コミュニケーションを発揮することが会社の維持発展につながるのだと思います。  

【分科会報告】

 第2部は7つの分科会に分かれて活発な議論が交わされました。今年度は当日午前中に『渋沢栄一の故郷をめぐり渋沢スピリッツの原点を学ぶ』を掲げたオプショナルツアーを実施。また見学分科会を例年より増やす等、一層学びが深まる結果となりました。以下に概要をご紹介致します。

【第1分科会】政策問題プロジェクト

食を通じた地域づくり
~身近な地域資源を活かした振興条例の取組み~

<パネリスト>
鶴田健次氏(マルツ食品(株)代表取締役)
新井俊雄氏((株)アライ 代表取締役)
吉田二郎氏(深谷市産業振興部 部長)
<コーディネーター>
国吉昌晴氏(中小企業家同友会全国協議会 副会長)

   第1分科会の終了後、会場を出るときに、なんとも言えない温かさを感じている自分がいました。それは震える体で風呂に飛び込んだり、凍える手をストーブにさし出したときに得られる「暖」ではなく、心の奥底から湧いてくるものあり、どんな強い風にも冷たい雨にも影響されることがない確固とした、しかし優しい温もりでした。
 基調のパネルディスカッションでは中同協の国吉副会長をコーディネーターにお迎えし3名のパネラーから話しをお聞きしました。
 まず今回の会場である深谷で漬物の生産を行っているマルツ食品㈱の鶴田社長から、多くの野菜が全国でも有数の生産量を誇ってきた地域だからこそ、その加工品である漬物を地元で生産しなければならないという強い自負を示されました。今年の3月に振興条例が制定された深谷市ですが、それ以前から多くのアイデアでまちをPRしています。深谷市産業振興部の吉田部長からは具体的な取り組み事例について披露されました。
 そして振興条例では先輩である川口市で、かつて盛んだった麦味噌づくりの再興に取り組んでいる ㈱アライの新井社長からは、その目的と現在までの苦労、そして感じられてきた手ごたえについて報告がありました。

   分科会の報告をまとめるにあたり、内容を字数の可能な限り記すのが一般的かと思いますが、今回に限りまず伝えるべきことは、3名の行動を決めた決断の根底に強烈な「郷土愛」があり多くの課題を克服し続けている原動力はそこにあると報告すべきだと思いました。
 地域づくりといえば、ともすれば、「何をしたか」、「どうやったか」そして「どうなったか」のみが語られることが多いのですが、そんな安直さでは決して理解できない郷土を想う柔らかい頑固さが3名に共通するものであり、それが何ともいえない温もりを発しているのだと思います。何かを無邪気に愛せる心は清く温かいものです。
 地域づくりとは、まず仕組みづくりではなく、その地域を愛する者たちが何か行動を起こし、智恵と得意技を持ち寄り、輪を広げていくことであり、振興条例とは行政がその輪に加わりやすくするためのツールとしてとらえるべきだと強く感じました。何のためらいもなく自分のいる地域を愛している、大切だと語ることができる中小企業家がそこでは主役になるべきだと。

【第2分科会】 経営委員会

経営指針だけでは変わらない!
~若手職人と共に育つ愚直経営の真髄~

報告者:?橋正哲氏氏((有)?中板金工業 代表取締役)

  職人天国から不遇の時代へ
 職人さんにとっては天国のような時代があったそうです。1日3食に晩酌までついて、さらにお金まで貰える、まさに夢のような時代です。それが今では職人が軽く見られる時代になったと語ります。親は子供に継がせたくない、子供も親の背中をみて魅力を感じない。この悪循環で職人さんはどんどん減ってきて、今では草加市に数社しか存在しないそうです。
 後継者職人不足は深刻で、仕事はあるが職人がいない。ゲリラ豪雨や竜巻などの自然災害による需要はあるものの、大量の仕事が受け切れない状況にあるとも語られていました。

技術を次世代につないでいく
 板金業とは、建築業の中でも重要な役割を担っており、建物を雨風から守るとても誇らしい仕事です。この技術を次世代につないでいくことこそ?橋社長の目指すところだと感じました。ひとづくり・ものづくりにこだわり、職人を育てる。また板金業の社会的地位の向上の話からも?橋社長の本気度が伝わってきました。

  同友会入会前の?中板金
 同友会入会前の会社は「行き当たりばったりの職人集団」だったそうです。売上は大幅減、創業70年は迎えられるのか?債務超過に加え、内部留保はゼロとなり、頭を抱えたそうです。当時は社員の数は少なく外注ばかりに頼っていたそうです。社員教育といえば、「仕事は見て覚えろ」「若い奴は邪魔」のような、よい教育が出来ているとは言いがたい状況だったそうです。
 夜のコミュニケーションは取れていたのに若者が育たない。?橋社長は「お酒で人は動かない」ことを学んだそうです。
 平成11年には売上が3割減という状況に陥ります。神にもすがる思いのなか、同友会の経営指針セミナーに出会います。指針作りにはとても時間をかけたそうです。最も苦戦したのは理念編の最初。「何のために経営をしていますか」という問いに「お金のため、欲しい物を買うため」と書いたそうです。
 経営指針セミナーには経営の先輩や仲間がたくさんいます。一緒に考え、みんなで悩み、そして?橋社長の心の奥底に眠る指針が形になっていきます。見事、指針書を完成させて、社内で発表しました。ファイルにして社員さんに渡したものの、読まれずにしまわれてしまったそうです。さらにこの年の売上は15%ダウン。指針書が完成したのになんで?そう思われたそうです。
 社員が主体的になるには?とにかくやり続けることが大切なのでは?と気持ちを立て直し、ゆっくり話ができるよう、作業場の一部を改装し、ミーティングルームを作ります。そこで個人目標の設定や、簡単な組織図に役職を入れて掲示したりと工夫していくうちに、徐々に社員さんたちが自主的に動けるように変化してきました。約5年の月日がかかったそうです。

経営指針づくりには10年かかる
 その後、?橋社長はスタッフとして経営指針セミナーに参加します。そして4年後には委員長になり、3年間もの間、大役をやり遂げます。引き受けたときは後悔もあったそうですが、全国の経営者との出会い、たくさんの刺激を受けて勉強し続けたのだそうです。
 これを持ち帰り、レポートにまとめ、社員さんと共有する。これを繰り返したと話されていました。
 この年の利益は過去最高、自己資本比率も2桁まで回復されたのだそうです。?橋社長が語る「どんな人でも育つ会社」、「地域でアテにされる会社になる」という熱い言葉に参加者みなさんも共感し、とても感動いたしました。

【第3分科会】 共同求人委員会/社員教育委員会

あなたは社員との信頼関係が出来ていますか?
~人間力が会社を育てる!~

<コーディネーター> 
阿部重利氏 ヒューマネコンサルティング(株) 代表取締役
<パネリスト>
三角喜久治氏((株)万代電気工業 代表取締役)
高橋 清氏((株)エンライト 代表取締役) 
小山展弘氏(泰清倉庫(株) 代表取締役社長)

   今回は「あなたは社員との信頼関係が出来ていますか?」というテーマでしたが、基調講演から今後、激変する世の中で経営するに際し労使コミュニケーションと社員との信頼関係は必要不可欠ではないかとの阿部氏からの問いかけから始まりました。
 信頼関係ということで現在の人間関係の悩みについて伺う事になり、三角氏は今後の事業継承について後継者の育成が難しい、また職人であるための人材育成に時間がかかり、育つ前に退職してしまうという事。小山氏は、現在の会社では社歴が浅いまま専務となり、その後の突然の社長からの事業継承で、それまで働いていた社員との信頼関係を築くことに大変苦労した。そして、今後その社員とどのように向き合い改革を進めていくかが課題という事。
 高橋氏は会社へのコンサルティング業務という観点から、組織開発していく中では組織を活性化して社風を良くしていくことが重要になり、それを行っていくのは人なので、やはり人との関わり合いは大切であると話されました。

   グループ討論は、「成功体験、失敗体験から学ぶ!人間力のある社長とは?ない社長とは?」をテーマに討議されました。
「人間力のある社長とは」の討論結果は全7グループの共通内容で、“コミュニケーション能力”“社員に関心を持つこと”でありました。あるグループからは、「社長を見ているのは社員なので、その社員が社長に魅力があると思えばそれが社長の人間力なのではないか」、また、小さい子どもと親との関係のように子どもが親に対し「見て、見て」と言えば親は聞いて見てあげて褒める。そのような関係が社長と社員にも必要なのではないかという意見もありました。
 最後に山崎座長から基調講演にもありました、相互尊重=社長が社員を信頼する。相手の立場で考える。そして、信頼して委譲範囲を決め権限委譲する。社員と対応する場を多く持ち誠実に接する。そして情熱を持って働く。その後、山本五十六のことば「やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、褒めてやらねば、人は動かじ」「話し合い、耳を傾け、承認し、任せてやらねば、人は育たず」と言われ、全体をまとめました。
 テーマの結論としては、この山本五十六の言葉が全てであるように思います。ですが、人間力という人それぞれ異なる魅力だからこそ、いつの時代もどのようなことが最善、最良なのか皆で考え再確認していきたいと感じました。そして、その考える場が同友会にあるということに感謝し、それが第3分科会の学びであると私は思いました。

【第4分科会】 女性経営者クラブ・ファム

既成概念を脱して進化する企業づくり
~社員の活躍の場を戦略的に創出して実践 ~

報告者:塩崎敦子氏((株)エステム 取締役、愛知同友会)

   大学の工学部で勉強をしていた塩崎氏は就職活動をしていても「何かが違う」と悩んでいたそうです。そんな中、㈱エステムの当時専務だった鋤柄氏(現会長)だけが「うちは男性も女性も期待する事は変わらないから、やってもらう仕事も一緒だよ」と言ってくれたので、「ここだ!」と思い入社を決意しました。
 しかし、経営陣の考えは現場までは浸透しておらず、入社当時はコピー・お茶くみ・電話番ばかり。「自分のやりたい仕事は排水処理なんだ!」と訴えても「女の子はね~」の繰り返し。それなのに少しでも意見を言うと「現場も知らないくせに」と言われ、堪忍袋の緒が切れた塩崎氏は「現場に連れて行ってくれないといつまでたっても一人前にはならない」と上司に直訴。念願の現場へ行かせてもらえる様になりました。
 今までは、「女性厳禁」だった4K(危険・キツイ・汚い・臭い)の世界へ飛び込んだのだから、まずは男性と同じチームで働くために認めてもらわないといけないと思った塩崎氏。汚い仕事、力仕事を進んで行い、先輩達が苦手なところも勉強してフォローするという努力を重ね、入社10年ほどで課長になりました。

   「女性だけ」「男性だけ」ではない全ての社員が対象の『やりがいをもって全社員が働き続けられる会社』を作ろうと考え、社員からの意見・提案を参考に、いくつもの制度を作りました。女性も男性も使える「育児休暇」や子供が小学校入学するまでの「時短勤務制度」、病気や介護などで一度退職した社員が戻ってこられる「カムバック制度」など、『会社がここまでやってくれたら自分はもっと頑張れる』という声を拾っていった結果、退職者がほとんど出ないプロフェッショナルの集団を創り上げる事に成功しました。
 「『女性社員は面倒』というのは、ただの先入観でしかなくて、性別の差より個性の差の方に重点を置くべきです。男性か女性かというのはあくまでも『個性の一つ』と考え、まずはそれを認めて育て、社員の活躍の場を戦略的に創出して実践できる環境を作る事が、これからの会社や社員に必要なことだと思います。これを礎に当社は100年続く企業を実現したいと思っています」と、堂々としたお話でした。
 最後に、座長の三角恵氏より、「中小企業は好循環を作るのがとても難しいです。今日の報告からこうしたらもう少し良くなるかも ? というヒントをたくさんいただけました。そして一番に思った事は、経営陣と社員の歩みよりとコミニュケーションがとても良くとられているという事でした。この会社は『100年企業』を実現できる素晴らしい企業だと思いました。」というまとめの言葉で第4分科会は終了しました。    

【第5分科会】 障害者雇用問題部会

地域の多様な人々と社員の集う企業づくり
~夢の実現へ向けて障がい者雇用に踏み出す~

報告者:
横山由紀子氏 〈㈲ 福祉ネットワークさくら 代表取締役〉 
三鴨岐子氏 〈㈲ まるみ名刺プリントセンター 代表取締役社長、東京同友会〉

   第5分科会では、介護保険に基づくサービス事業(居宅介護・通所介護・訪問介護)等を経営し、社員数77名、その9割が自転車通勤という地域密着型の事業展開をしている ㈲ 福祉ネットワークさくら 横山由紀子氏が障がい者の雇用の効果と課題の報告をしました。
 またアドバイザーとして東京同友会の障害者委員会の委員長であり、社員数8名中障がい者を3名雇用し、障がい者雇用に成功されている ㈲ まるみ名刺プリントセンター 代表取締役社長の三鴨岐子氏からアドバイスをいただきました。
 横山氏は2年前に事業継承し、2代目社長のジレンマを経験しながら力戦奮闘する中で、昨年の障害者問題全国交流会で出会った素晴らしい経営者の人間力に「私もこんな経営者になりたい」という気持ちと「良い事は、まずはやってみる」の行動力から、夢の実現に向けて、一昨年11月に従業員へ障がい者雇用の周知を図り、12月にハローワークへ、そして昨年1月からトライアル雇用が始まりました。 
 エピソードとして、初日から欠勤、従業員の気遣いから仕事のミスを本人に言えない、本人と従業員間で意思疎通ができず従業員からの苦情(逆差別ではないか!)等たくさんの問題の中から、社員とのコミュニケーションを大切にし、また社員を信頼し任せる経営を実践中です。

   三鴨氏からのアドバイスとして、プロとして利益を上げ、それを分配するのは大前提であること。また人間関係は対等であり、障がい者側からニーズを言ってもらい、その環境を整えるのが経営者としての役目なのではないか。しかし、仕事を続ける・辞めるは本人が決めることでもある。障がい者を心から理解し、多面的に相談できる環境も大切、等のアドバイスをいただきました。
 以上の報告から、障がい者雇用は労使コミュニケーションを図るための手段であり、また同友会の理念である人を活かす経営を実現するためのものでもあると確信いたしました。
(補足)
 障害者雇用問題部会は、昨年1月に発足した部会です。ダイバーシティー経営では障がい者雇用は避けて通れません。そんな中、一昨年10月に障害者問題全国交流会が横浜で開催され、埼玉同友会から19名参加しました。参加したメンバーを軸に埼玉でも障害者雇用を真剣に考える機会を作るべく、一昨年11月に障がい者雇用問題部会準備会を立ち上げ、昨年1月に障害者雇用問題部会を設立、3月にキックオフ例会、6月に神奈川同友会の㈱バニーフーズ(就労継続支援A型)見学、7月は東京都立王子特別支援学校を見学、9月は第2回例会、そして今回の発表に至りました。

【第6分科会】 見学分科会

市場変化への対応と企業の国際化!
~海外進出をしてみて感じた、人を生かす経営とは!~

報告者:高橋尚樹氏 〈三矢精工 ㈱ 代表取締役社長〉

   第6分科会では、三矢精工㈱代表取締役 高橋尚樹氏から「海外進出をしてみて感じた、人を生かす経営とは!」について高橋氏の実体験をもとにご報告を頂きました。
 三矢精工㈱は1913年の創業以来、常に最先端の技術をもって自動車部品の製造にあたり、「見えない製品に三矢の誇りをこめて」の志でお客様と社会に貢献し続けている実力と実績のある会社です。
 創業時の銅製ハーネスを輸入する商社から、時代の流れを先読みし同じ銅を材料とする軸受の製造、モノづくりへとシフトします。現在は国内の各自動車メーカーのトランスミッションやサスペンションなど、普段は目に触れることのない「見えない製品」かつ車の性能を左右する重要な部品の製造に、独自の技術でお客様のニーズに応え続けています。
 グローバルな競争の激しい業界において、100年もの間お客様から信頼され続ける理由、そこには高橋社長の「1%の可能性をモノにするために120%の熱意で挑む」この想いが全ての基本にあると感じました。
 お客様のあらゆる要望に全力で取り組む、全てがオーダーメイド、開発から試作、量産まで社内で完結、毎月1000種もの多品種少量生産に対応するなど、高橋社長の改善改良の精神を全社員一丸となって実践している事が社員さんの働く姿勢からも伝わってきました。

   また近年の円高や製造業界の地産地消の大きな流れ、国内での自動車生産量の縮小などから、2011年の秋に海外進出を決意し、2013年タイに工場を建設し新たな1歩を踏み出しました。タイを選んだ理由は、国の政策で製造業を誘致し、その80%以上が日系の自動車産業(半分は輸出)、ま
た来年度からアセアン地域内は国税がかからず、人口構成は若者が多く高齢者が少ない、賃金は日本の1/3 ~ 1/4、失業率1%未満、ベトナム、他国に比べインフラも整備されていて、日本人の滞在者もアメリカ、中国に次いで3位、日本食ブームの正に活気にあふれた親日の国だからとの事です。
 そんなタイに進出して感じたのは、様々な文化の違い、平等の考え方、女性の社会進出、仏教国での習慣等、今までの自分の価値観は役に立たない事を学び、「どうしたらいいか?」から「どうしたいのか?」を社員自ら考えさせる事で自覚が生まれる事に気づいたそうです。
 海外進出、国際化して気づいた「人を生かす経営」とは、社長の価値観は絶対ではない、社長が変わる、社員に対する対応や想いが変わる、結果社員1人1人が責任を持って働くことで社風も変わってゆく、と力強く語られました。
 高橋社長の「1%の可能性をモノにするために120%の熱意で挑む」改善改良の精神と、社員を信じる熱い想いが感じられた有意義な分科会となりました。

【第7分科会】 見学分科会

捨てられる家庭の油でトラックが走る!?
~環境にやさしい再生エネルギー生産の取組みから

報告者:
丑久保紀美氏 〈㈱武蔵野物流 代表取締役・㈱アドバン代表取締役〉
岡田雅仁氏 〈㈱アドバン工場長〉

   見学先に到着すると、はじめにグループ会社である㈱武蔵野物流の丑久保社長よりバイオディーゼル燃料(BDF)の生産に至った経緯を伺いました。

物流企業としての環境対策
 20世紀の終わり頃になると、地球温暖化、その原因となる二酸化炭素や有害物質の排出が世界的規模で問題視されるようになりました。そのような中、物流業として何を行うべきかを検討し、新車への買い換えや運行状況を記録する装置を搭載しての燃費向上、アイドリングストップ等を行っていたそうです。
 しかし、これらは根本的な対策に繋がっていないと考え、さらに検討を重ね続け、ディーゼルの原動力となる燃料に着目しました。化石燃料である軽油は大量の二酸化炭素や硫黄酸化物を排出するのに対し、植物から生成されるBDFは原料となる植物自体が二酸化炭素を吸収しているため二酸化炭素の排出は論理的にゼロ。硫黄酸化物も99%少なく、ディーゼルエンジンも改良せずにそのまま使えるからです。 

  天ぷらの臭いがする排気ガス
 見学は並ぶ2棟の大きなタンク(製品となったBDFのタンク、原料となるメタノールのタンク)の前を通り屋内プラントに入りました。㈱アドバンの岡田工場長の案内で特注で設置した装置の役割や各工程で精製されるものについて解説いただきました。これらは改良を繰り返しながら品質を向上させ、条例もクリアしたことで製品として外販できるに至ったとのことです。
 プラントから出るとトラックが2台停まっていました。BDF車と軽油車です。BDF車のマフラーに手をかざしてから鼻先に持ってくると天ぷらのような臭いが…。マフラーに白い布を当てエンジンを吹かしてもほとんど白いまま。一方、軽油車は一瞬にして黒煙が付着。BDFと化石燃料の大きな違いが如実に示されたのです。

新たなる取り組み
 ㈱アドバンでは藻類から生成するBDFの研究も行っています。まだ研究段階で機密もあるため見ることができたのは外観や油の抽出装置くらいでしたが、大きなプロジェクトへの小さな一歩を見せていただいた感じです。施設の大きさに比べ現段階では1度の回収で抽出できる油は微々たる量らしく実用化はまだ先のようですが、その日が来るのはそう遠くないような気がします。
 ㈱ アドバンでは工場長をはじめ社員の皆さんBDFに関して未経験からスタートしています。「創意工夫型の企業」という企業理念が行き渡っているからこそ未知の製品作りに挑戦して行けるのではないでしょうか。岡田氏が「どんなすぐれた機械よりも、社員一人ひとりの力が必要」と語られたのがとても印象的でした。

地産地消のリサイクル
 原料となる廃油は近隣の飲食店、スーパー、病院等との提携が主のようですが自治体との連携で家庭からも回収されています。地域におけるエネルギー自給率を高める地産地消型のエネルギービジネスを実感できた見学分科会でした。

【オプショナルツアー】 バスツアー

渋沢栄一の故郷をめぐり
渋沢スピリッツの原点を学ぶ

ガイド:吉岡信彦氏〈NPO法人 澁澤榮一翁遺徳顕彰会 副代表〉

   埼玉中小企業家同友会が発足して40周年という記念すべき全県経営研究集会としてオプショナルツアーが企画され、渋沢栄一の故郷を見学しました。ツアーの目的は『近代日本経済の父』渋沢栄一が少年時代どんな環境で育ち、何を学んだか?当時の時代背景と共に、『教育』『地域』の重要性を再認識することでした。渋沢栄一の喜寿を記念して建築された『誠之堂』から始まり、銀行の育ての親ともいわれる『佐々木勇之助』の古希の記念に建築された『清風亭』を見学。
 次いで生家・渋沢栄一記念館を訪問。ガイドの方のわかりやすい説明で渋沢栄一の人間像が理解できました。大の勉強好き、よき友との出会い、そして強運の持ち主と彼が500以上の企業創設に関与できた理由がわかったように思いました。彼が数多くの体験を学んだことから理論的な提案・発想がうまれ、それらを若手と共に日本経済に落とし込む。彼の頭には常に『一人でも多くの人の幸せ』を願っていたそうです。論理的・若手育成・地域貢献・発想力。同友会理念と結びつき、
『よき経営者とは』の問いに答えてくれたように思いました。

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