同友会ニュース−活動報告

2016年度 全県経営研究集会 【分科会報告】

本気の改革で時代の変化を乗り越え切り拓こう ~「人を生かす経営の総合実践」・全県に同友会の学びを広げよう~

2016年全県経営研究集会が11月8日に川口総合文化センター・リリアと川口市民ホール フレンディアで開催されました。
第1部は5つの分科会に分かれて学び合い、グループ討論では活発な議論が展開されました。

第1分科会  【経営労働委員会】

私が会社を変えたいと思った3つの理由
~経営指針が変えた!「俺」の会社から「みんな」の会社へ~

報告者:満生 剛氏〈㈲ぐっとリフォーム 代表取締役、中部地区会〉


 満生社長の実践報告は2015年の経営指針セミナー受講時に、戦略編にて「労働環境改善の取り組み」というテーマでお聞きしていました。今回は2016年経営指針セミナーのスタッフとしてご一緒させていただく中で気持ちも新たにお話しを伺うことができました。

  ≪創業から10年≫
 激動の10代を経て、ホテルマン・盆栽士(夢見た)・建築関係とさまざまな職を経験した満生社長でしたが、勤めていた建築会社の労働環境の悪さに見切りをつけて32才で独立しました。しかし2005年、高齢者に対する住宅リフォーム詐欺事件が紙面を騒がせる中、仕事が激減。なんとか10年持ちこたえたものの、先行き不安で会社を続けていけないのではないかと追い詰められました。

≪出会いと宣言≫
 自ら語った成長なしの10年間。社員に子供ができたことをきっかけとして、会社を変えたいと心から思ったそうです。そんな時、出会った喜多計世氏[喜多ハウジング㈱取締役会長/石川同友会]に大きく心を動かされます。
 《相見積もりは一切お断り》と強気な経営をする喜多会長との出会いをきっかけに、浅い関わりだった同友会への興味と意欲が湧いてきたそうです。それまでは社員を説得するためにあるとしか思っていなかった経営理念でしたが、初めて正面から取り組むことを決意します。
 「経営理念なきところに企業はなし」「経営理念なきところに人材育成なし」「経営理念なきところに社員の幸せなし」
《いい会社を作りたい!》 自社を変えるべく、2013年に経営指針セミナーを受講するため、土曜に会社を抜けることを社員に伝えました。みんなの会社をみんなで良くして「収入20%アップ!」を達成しよう、と社員に宣言し、宣言することにより社員とベクトルを合わせていきます。

  ≪それぞれの変化≫
 経営指針を実践する過程でのさまざまな課題にも真摯に社員と向き合い、解決していきます。そして3年間で見違えるように会社は変わりました。「人は環境で変わる」「環境で会社は変わっていく」社員に宣言をし、作り上げた経営理念。社員との共有に積極的に取り組んだことにより満生社長自身が一番変わったのではないかと思いました。
 グループ討論は経営理念・社員との共有・自社の将来(ビジョン)をキーワードに、それぞれに活発で充実した討論となりました。

≪最後に≫
 経営指針セミナー受講後、「張り切ってやりすぎた」と笑って語る満生氏。そんな実直で明るい人柄が魅力的な満生社長だからこそ、社員はついていくのだろうと思えました。社員と会社の未来を共に考え、同じ方向を見ることで、初めて理念の共有のスタートに立てるのだと学んだ分科会でした。

第2分科会 【障害者雇用推進委員会】

魅力あるスイーツで付加価値を高めるテミルプロジェクトの実践
~障害者施設の売上UPに大きく貢献~

報告者:船谷博生氏〈㈱テミル 代表取締役、神奈川同友会

 私が所属する障害者雇用推進委員会が企画した分科会では、障害者だからと妥協せずに商品(お菓子)の付加価値を高め、そこで働く障害者及びスタッフの働きがいを徹底的に追及し、障害者であっても「かわいそう」だからではなく「おいしい」からという理由で買ってもらうべく品質での妥協は一切許さないというコンセプトで障害者施設の賃金UPを実現する「テミルプロジェクト」について、(株)テミルの船谷氏にご報告いただきました。
 

   報告は障害者の賃金が何故に全国平均14,000円か! という問題提起から始まり、プロジェクトの具体的内容だけでなく、どんな思いでプロジェクトを遂行しているのか、他業種との連携の仕方など、また、他先進国の障害者の労働権の保障についての現状による学術的な部分まで踏み込んだお話も伺うことが出来ました。
 キーワードは4点。1.Dignity of Risk「リスクを負う尊厳」ということで、誰でも失敗する権利があるんだということ。あなたが全く失敗する機会を得られないならば、どうですか?2.Decent Work「まともな仕事」ということで、働きがいのある人間らしい仕事にしようということ。彼らならではの強みを見出す。彼らだからこその強みに変える。可能性を可能に変える。できないと決めつけない。3.QWL(Quality of Working Life)「労働生活の質」ということで、働きがいを重視し職場生活を質的に改善していこうということ。4.CSV(Creating Shared Value) 「共通価値の創造」ということで、社会的課題を解決しつつ企業価値も創造するということ。CSRの考え方の責任からCSVの戦略へ。
 

   最初から障害者にはできないと決めつけずに、とにかくやってみる。失敗する権利を認めつつ、その中から強みを活かす仕組みを作り出し、働きがいを醸成する。そうすれば、障害者の生産性は必然的に上がり、QWLが向上する。その結果として売り上げもUPする。これこそがCSVの取り組みである。
 このような取り組みの有効性は決して障害者に限ったものではなく、多様な人材を生かし、その能力を発揮できる機会を作り出すダイバーシティ経営が求められている現代において、テミルプロジェクトは、まさに同友会が目指す「人を生かす経営」そのものを実践しているのではないでしょうか。
 あきらめずに可能性を求めて失敗を積み重ねていくことが企業の成功につながることを改めて学びました。ゲスト・オブザーバーなど会員以外の参加者が多い分科会でしたが、みな障害者雇用や障害者について真剣に学びたいという姿勢でしたので、グループ討論でも活発な意見が出され、素晴らしい深みのある分科会となりました。

第3分科会 【女性経営者クラブ・ファム】

三州製菓におけるダイバーシティ経営
~一人三役制度が中小企業発展のカギ!!~

報告者:斉之平伸一氏〈三州製菓㈱代表取締役社長〉


 第3分科会は15グループ・120名の参加者で大変盛大に催されました。2011年10月、全国に先駆けて埼玉版ウーマノミクスプロジェクトが発足しました。斉之平社長はこれよりずっと前の2004年から、女性が潜在的に持つ高い能力を発揮する場を作り、自己実現を支援しています。

   女性活躍推進にあたり重要なのは、1.社長が宣言すること。2.委員会などを使って現場の声を拾い上げ、社長として素早く決断すること。3.助け合い・お互い様の社内風土の醸成
 一朝一夕にできることではありませんが、簡単に諦めることなく信念を持って行動していれば必ず社員に通じるということを、斉之平社長は体現されています。社員が敬遠することはまずは社長がやる。そして、嘘をつかない。そういう社長の真摯な態度が、社員を惹きつける理由なのでしょう。『人が真に活きる経営を追求する』を社訓とし、ダイバーシティ経営に取り組んでいます。
 輝かせたいのは女性だけではありません。社員がやる気を出すのではなく、決定権を持たせやる気が出るような環境を作り、自主性を育てる社内風土があります。システム手帳型事業計画書を全員に配布し基準を知らせているので、社員はどんなに自由に行動しても理念に反して枠からはみ出ることはないのです。
 一人三役、チームで仕事をするのが大事。お陰さま・お互いさまの心で助け合います。その土台にある『一日一善』で、相手に対する感謝の気持ちの見える化をして、より一層連携を密にしていくのです。

   すると、要らぬ確執も無駄な残業もなくなります。最低限の人数でその時々の繁忙部署の人員不足を補えるし、産休・育休などがとりやすいのです。ここで社長も率先して動きます。社長も三役を持ち、慣れない手つきでパソコン操作もするという話を聞きました。
 本日、お土産にいただいたお菓子「揚げパスタ」も、若い女性の視点で生まれた商品です。3年経っても売れないこの商品を、社長は継続して販売する決断をし、試行錯誤を繰り返し揚げる機械を完成させました。5年経って売れ始めた頃、類似品が出たそうですが、この機械は他社にはないので商品の差別化ができ、他の追随を許さなかったと言います。
《イノベーションを起こし断トツ逃げきる!》
 あやかりたいところですが、まずは小さく、当社では一人二役から始めてみようと思います。そして、感謝の気持ちをたくさん声に出す。まずは社長から。

第4分科会 【東部地区会】

理想を現実に変えた新事業
~保育・介護からみえてきた地域コミュニティの在り方~

報告者:鈴木美緒氏〈㈱grain grain 代表取締役、東部地区会〉


 「理想を現実に変えた新事業」をテーマに、保育・介護から見えてきた、地域コミュニティの在り方についての報告でした。

   鈴木氏はデイサービス事業と保育園を一体的に施設運営し、介護職員も隣の部屋にある保育園を利用することで、子育てしながら働くことのできる職場環境を実現。高齢者と子どもとの世代間交流で、より良い介護・保育支援に向けて良い相乗効果を実現した功績を認められ、「さいたま輝き荻野吟子賞」を受賞しました。
 元々、保健体育の教師を目指していた鈴木氏ですが、大学を卒業してすぐに先生と呼ばれる事に違和感があり、社会人になる事を選択。2年間の社会人としての経験を積み、晴れて体育教師になりました。念願の教師職ではありましたが、出産・子育て・新米教師と同時進行になり、子育てと仕事の両立は思った以上に大変な事を実感。この自身の経験からも、起業に繋がっていきました。
 他にないデイサービスを作りたいと、亡き叔父が残した建物を使い起業を決意。行動力のある鈴木氏は短期間の間に現在の形にしました。しかし理想の施設を作ったものの、離職が止まらない時期があり、女性が働くというのは事業所内保育よりも、家族の理解や、地域とのコミュニティが大切な事を実感した鈴木氏。そんな中、2015年、同友会と出会い、その年の経営指針セミナーを受講し、成文化を果たしました。
 地域との繋がり方としては、自社を拠点として1.事業所内のイベントなどの情報を自社から発信する事。2.外に出向いて講習等を行うこと。3.小さな事業所だからこそ、地産地就(地元で働く)など、今できる事を一つずつ模索しながら取り組んでいます。

   現在の課題は、介護事業と保育事業の特性の違いから法改正の度に仕組みを変更しなくてはならないことや、世代間交流の深堀り、事業所内保育所としての運営、人材育成、スタッフのキャリアアップなど様々あるそうですが、何より同友会で学び自身の成長を図りたいとの事。
 グループ討論では「身近なコミュニティ(社内・家族・地域)とどこまで深く関わっていますか?」というテーマで討論しました。社員に感謝の思いを表すサンクスデーや、クリスマスに全員にケーキをプレゼントするなどの社内での様々な取り組み事例が報告され、興味深い時間となりました。
 鈴木氏は初めての全研での報告でしたが、初めてとは思えないほど力強く堂々とした報告でした。人や家族、採用や社員教育などに悩む中でも、自ら行動してチャレンジする姿勢が、経営の理想を現実に変えていく事に繋がる一歩になると理解できる分科会になりました。

第5分科会 【見学分科会】

地域や会社同士のよりよい関係とは?
~住工共生の都市型工業団地の取り組みを学び、自社経営と地域貢献を考える~

場所:川口新郷工業団地協同組合
   ・石川金属機工㈱:特殊合金の鋳物製造
   ・川口板金㈱:大型油圧プレス機による自動車シャーシの製造
   ・㈱明光社:出版物の製本加工

講演者:川口新郷工業団地協同組合
    副理事長 矢野剛氏〈㈱明光社 代表取締役〉


   第5分科会は川口市の新郷工業団地を訪問し、住工共生を目指した都市型工業団地内の企業経営と、地域住民との触れ合いについて見学と講演を頂きました。見学は3班に分けて3社を訪問し、担当者の方は同じ説明を3回していただく形でお願いしました。最後の班の時には喉が枯れてしまい、大変だった事と思います。訪問企業は平日の就業時間内であり、作業の工程を間近に見せて頂き、大変感銘いたしました。

   石川金属機工㈱は1946年設立、今年で70年目を迎えました。川口の代表的産業である鋳物鋳造業です。主に船舶用品を非鉄金属にて鋳造しており、殊に一般商船から護衛艦等々の製品を製作しています。高精度の製品は非常に優れていて、政府関連の受注実績からみても会社の強みとして自負されていました。第3班の見学時には、電気炉やガス炉で溶解した1,200℃の合金(湯)を鋳型に流し込む工程を目の当たりにし、その迫力に圧倒されました。
 川口板金㈱は1968年設立。280名の従業員数で、主に自動車部品のプレス、板金溶接、機械加工からアッセンブリまでを含めた複合加工会社です。大型油圧プレス機で厚さ6~8?の鋼板を一瞬でプレスするその音の大きさに圧倒されました。
 また、毎年クリスマスには、川口市内の障害者施設に一企業としてケーキを届けるボランティア活動を通して地域の親睦と貢献を育んでいます。

   ㈱明光社は1963年設立の製本業者で、東京都文京区白山に本社を構え、小部数の製本をメインに行う「東領家工場」、大部数の折りや製本については「川口工場」の3箇所で操業されています。今回見学させていただいた川口工場では、並製本(背を糊で接着し表紙でくるんだ本)を年間200万冊製造し、PUR(ポリウレタンアクティブ)系ホットメルト接着することで、通常の並製本よりも品質の高い、見開きも、製本強度も、糊の付きも良い耐久性に優れた製本技術によって他社との差別化を図っています。そうした機械化された工場と熟練した職人の方々の目が、優れた本を造り出す大切な要素であることを痛感しました。
 各企業移動を含めて30分。3社で90分の時間の中で異業種を見学し、多くを学ばせて頂きました。

  その後、同団地内の「新工会館」に移動し、協同組合の副理事長も勤められる矢野剛氏より、工業団地と地域住民との融和について、講演を戴きました。
 昭和37年当時は、交通の便が良い所として、川口駅周辺でそれぞれ創業していました。昭和41年10月、川口市は川口市総合開発基本計画を発表し、昭和44年、川口市新郷地域に埼玉アリーナ約5個分の広さの工業団地を造成し、川口駅周辺で創業していた企業を中心に分譲が始まりました。昭和45年、大阪万博開催の年に川口新郷工業団地協同組合が設立されました。
 住工共生の都市型工業団地の取り組みとして、当初から計画的に騒音・振動・粉塵等を伴う企業を中心部に集め、その廻りに倉庫・運送等比較的住宅街に影響の少ない企業を集め、さらにその廻りを取巻く形で緩衝緑地帯を設けるという「環境整備」設計を立てました。
 衝緑地帯は「ゆうゆう歩道」と名付けられ、住宅地と工業地の境界・隔て・壁といった意味合いが、交流・コミュニケーション・共生へとつながり、近隣住民の散歩道、憩いの場へと変化を遂げました。また、ゆうゆう歩道を毎月全企業が参加して合同清掃を実施しているとの事でした。維持管理と共に企業の自主的連帯感を育てるよい機会になっているように思いました。

   設立から47年。課題も山積で、現在81事業所中の75%は社員数5名以下の小企業で、後継者難で廃業、不景気での倒産、新しい組合員の受入れの問題等々多々あるそうです。しかし、「環境整備委員会」をつくり、環境整備の更なる強化。近隣住民からのクレームも「出る前に止める」べく自主的に問題点のチェックをし、“転ばぬ先の杖”的対応も実践されています。
 さらに地域の一員として、「復興支援」「工業高校のインターンシップ受入」「修学旅行生の見学受入」等を実施し“工場を観光資源”と捉えた活動も行っています。「ものを造ることは人々の暮らしを創ること」。理念は、「緑と産業と暮らしの共生」。“共生”とは「異なる集団が仲良く一緒に暮す」こと。
そのためには、“何かを一緒に成し遂げること”が大切と捉え、地元3町会と連携して「ばんばん祭」を10年以上も実施し、成功しているとのことでした。
 

住工共生の都市型工業団地として、これからも環境に配慮し、知恵・労力合わせて心ひとつに今後への発展を実感すると共に、自社に持ち帰る様々な要素が詰まった見学分科会であったと強く感じました。   

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