同友会ニュース−活動報告

同友会大学~同友会の社員教育に根ざした全国の事例に学ぶ~

中同協に聞く 〈1970年初頭…北海道同友会で「同友会大学」の萌芽〉

  1、「同友会大学」は、いつ何がきっかけで誕生したのですか?現在までの歴史も併せて教えてください。

 同友会大学は同友会の社員教育と密接なつながりを持っています。その社員教育活動に先駆的な取り組みをしたのが北海道同友会でした。北海道同友会は、1969年11月に誕生しました。その当時北海道では大企業の青田買いが展開され、会員各社は「若者が来てくれない、定着してくれない、育たない」と言う深刻な悩みを抱えていました。
 こうした問題意識から、社員教育と共同求人の活動が一体に考えられました。当時の事務局長 大久保尚孝氏(故人)は、前職の銀行の貸付担当の職務を通して、「中小企業の最大の弱点は人材の確保と育成にある」との考えに立ち、同友会活動の柱に人材育成を据えて様々な活動を想起し実践されていきました。
 1970年に“上級幹部教室”をスタートさせ、幹部や中堅社員、営業マンなどを対象に、お互いに勉強しあう形で教室を始めました。ノウハウではなく、情勢について学ぶことや、科学的・体系的に学ぶこと、その上で同友会の理念を理解される大学研究者の協力を得ることが重要と確認されました。講師陣は確かな大学の教授陣にお願いしなければならず、長続きできなければ同友会への信頼も失ってしまいます。そのために会内の認識が高まるのを待つ必要があり、構想から実現まで10年近くかけて、1981年に北海道同友会大学が誕生しました。

〈北海道同友会の「同友会大学」のねらいとめざす人物像〉

 1970年以降社員教育活動に取り組む中で、北海道同友会の理事会では「同友会が行う社員教育は、会社にとって使い勝手が良い人間づくりであってはいけないのではないか」という反省点がいつも出ていたそうです。北海道大学教育学部、北海道教育大学などの先生方と社員教育委員会のメンバーが「教育とは何か、人間が育つとは」について懇談を重ねてきました。研修会・講習会の形では、訓練の域を出ない。本来の教育は「自分で考え、課題を見つけ、実践して、社会に役立ちながら生きていける能力を身に付けさせるようにサポートすること」ではないかという結論に達しました。ここから同友会大学構想が湧くのですが、札幌支部会員数が1200名を超え、会員の意識が向上して長期継続可能な条件が整って、1981年の開講のはこびとなったのです。
 北海道同友会の同友会大学では、表面的なスキルの習得ではなく、人間としての生き様を問うための教養を積む教育が志向されています。現在第64期に入り、これまでの卒業生は2459名。各企業の幹部や経営陣の一員として活躍しています。また卒業後は同友会大学同窓会を組織し、年2回の研修会を開催、自主的な研修・交流に続いて、さらには後継者グループも組織されています。  

       ▲同友会大学で学ぶ北海道同友会の受講生

2、全国の「同友会大学」について現在の状況を教えてください。

 現在「同友会大学」の名称で設置しているのは15同友会。北海道同友会をモデルとして、世界経済論、日本経済論、法と政治について、中小企業論、地域経済論、地域史、人間論、教育論、科学論などを扱い、総合的な知識の獲得によって教養深い人材育成を図ろうとしているのが特徴です。大学研究者を講師とした専門的な講義を含み、10回以上の長期連続型が多いのも特徴です。そのためには、大学研究者との長期にわたる協力関係づくりが、「同友会大学」の発展のカギを握ると言えるでしょう。また、受講する社員・経営者の学ぶ姿勢と、送り出す経営者・企業の支援体制が不可欠です。

3、「同友会大学」以外の幹部社員研修についてご説明ください。

 「同友会大学」以外にも、「幹部社員育成塾」「幹部社員共育塾」「社員研修連続講座」「社員と学ぶ共育講座」「共育ち同友塾」などの名称で、幹部社員研修が行われています。これらの研修は、比較的少ない講義数の中で、経営指針成文化実践運動に密接に関わる内容や、自社の事業分析収益改善など経営戦略論に関する内容、管理職の役割や部下とのコミュニケーションなど経営組織論に特化した講義を行う内容です。研修参加を通じて、自社の経営業績を向上させることを目的におく傾向が見受けられます。
 こうした社員研修をより有効にするためには、「同友会大学」の設置や、「同友会大学に準じるような活動を組み合わせることが有意義です。「同友会大学」は社員の人間としての総合的な判断基準を養い、学ぶ姿勢を高めていくものだからです。  

▲同友会大学受講風景(北海道同友会HPより)

  4、社員教育体系の中に「同友会大学」を位置付けている岡山同友会についてお聞きしたいのですが。

 岡山同友会の具体的な社員教育活動は、主に「社員共育大学」「幹部社員大学」「同友会大学」の3つの柱で構成され、いずれも社員と経営者が共に出席することが絶対の条件になっています。
 「社員教育大学」は、2015年で22期目を終え、のべ479社1221名が受講。修了者は930名に上ります。例年30 ~ 35社総勢120人前後の社員と経営者が受講し、「何のために働くのか」「生きがいと働きがいの関係」「責任とは何か」「目標と重要性」といった生きることと働くことの関係に迫る根源的なテーマで議論を行っています。
 「幹部社員大学」は「社員共育大学」の修了者を対象に、経営者と一体となって事業に主体的に取り組む幹部を育成することを目的としています。他社の経営者との本音の議論を通じて経営指針に基づく各社の経営をより実効性の高いものにすることを目指しています。1社につき、経営者一人と幹部社員一人の参加が原則。例年10社前後が参加し、月1回、全7講(アフター研修含む)で構成されます。
 「同友会大学」は経営の科学性に力点を置き、情勢を読み取る力や、中小企業が地域で果たす役割を正しく認識する力を目的としています。従来は経営者のみを参加対象にしていましたが、現在は経営者同伴であれば社員の参加も認めています。県内外から学識経験者を招き、「経済情勢と中小企業」「経営戦略論」「組織経営論」「地域経済論」などのテーマで講義と討論を行います。岡山同友会の社員教育は、社員(あるいは経営者)の成長に合わせて、段階的に学びを深めることが可能なプログラムになっています。

5、これからの「同友会大学」について大切に思われることは何ですか?

 これから「同友会大学」を実施する上では、同友会の社員教育の在り方を踏まえ、社員教育活動の中にどのように位置づけるかを、各同友会内でよく議論して決定することが有意義だと思います。そうすることが企業の真の発展につながり、地域からあてにされる企業と同友会運動へと、さらなる発展が展望できると思います。

広報委員がレポート取材しました! 【千葉同友会大学】

   千葉県中小企業家同友会が開催する同友会大学が1月27日(金)に第7期の講座を終了しました。埼玉同友会広報委員会では、スタート時から関わり、現在も同友会大学委員長として運営にあたる能登昭博氏と専務理事の川西洋史氏にお話を伺いました。

   千葉同友会の同友会大学は、今期全13講のプログラムで全25名の会員経営者及び、会員企業の幹部社員が参加しているそうです。
 同友会大学は「千葉県概論」、「日本・世界の経済」、「中小企業と地域」、「経営戦略と企業づくり」、「人を生かす経営」の5単元で構成され、広い視野で自社の未来を模索することを目指し、単に講義を聴いて終わりではなく、質疑応答や簡単な討論の時間、レポート提出・卒業論文もあり、受講生が切磋琢磨しながら学び合っているのだそうです。

   「第7期のテーマは『時代認識をしっかり持ち、主体的に生きるための総合的な人間力を高める』で、自社の社員を育成し、未来を模索する知恵を学びます。同友会大学にはメディアに出ている情報ではなく、中小企業の“今”をキャッチするヒントがあります」と能登委員長。
 ここまで聞いて大きく同友会大学への興味が増したところで、実際に同友会大学をどのように自社や同友会活動に生かされているかについてお話を伺いました。毎回、受講後のレポート提出もあり、大変だろうなと思いましたが、学んだことを整理することによって、どう自社に生かすかが振り返る事ができるそうです。能登委員長は「この積み重ねが環境の変化に負けないマインドを身につける力になった」と語ります。
 

  「同友会大学では、地域性を重要視した内容の講義も多く、自分の事業に盛り込んだことを一つひとつ実践していく経過が楽しい」とも語ります。中でも私が一番響いたのが新聞販売会社を経営する能登氏の「業界の非常識に挑戦し、誰もやっていない事に取り組むことができた」という言葉。「新聞の読み方講座」や子どもを対象にした「一日記者体験」など、地域の人に自社の職業体験を通じて、サービス・製品の良さ
を知ってもらうといった活動に取り組んでいるそうです。消費者に自分たちが住む地域の企業を知ってもらうには事業者はどう伝えたらいいか、そこに気付いたのが同友会大学での学びだったと伺いました。また、川西専務理事からは「同友会大学が同友会の会員拡大にもつながった」というお話がありました。同友会大学に参加することで広く経営者としての知識と教養を身につけ、地元の行政団体や市長との意見交換がはかれるとともに、他の経済団体とも交流ができる力が付いてくる。同友会活動を広く地域に浸透させ、新支部設立の際の推進力になったという実績をお聞きしました。「現在は同友会会員の経営者の参加が多いが、今後会員企業の後継者や幹部社員などへ参加枠をいっそう広げるように努力し、更なる会員拡大の力に繋げたい」とも語ります。
 

最後にその日の講義に実際に模擬出席させていただきました。この日は法政大学キャリアデザイン学部の教授 児美川孝一郎氏の講義で、『若者の可能性をどう開花させるか』がテーマでした。若者が自立するまでに育てる責任を経営者がきちんと自覚をしているのかを問い、中小企業で働く若者を育てる工夫や、異なる価値観を互いにどう認め合っていくかなど、組織を運営するためのヒントがたくさん詰まった内容でした。
 今回取材に参加し、同友会大学での学びは経営者としての幅広い知識や教養が身に付き、視野が広がるであろうことを実感しました。また、学びや気づきはどう自社に生かせるかを常に問い、それらを実践することで自身と自社の成長に繋げるべく、一歩一歩着実に前に進もうと思いを強くした1日になりました。  

              ▲法政大学教授 児美川孝一郎氏

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