同友会ニュース−活動報告

特集:エネルギーシフト《第4弾》 再生可能エネルギーから未来のさいたま市を展望する 〜さいたま市小水力発電施設と、独自のエネルギーシステムに取組む住宅建設会社を訪ねて〜

 エネルギーシフト(※1)取材第4弾は地元さいたま市内の2つの事例を対象に7月26日(水)取材しました。さいたま市水道事業による小水力発電施設と、埼玉県南東部を商圏に絞り木造住宅建築に特化した建設会社が独自に商品化に成功した地中熱利用システムの視察・取材を行いました。

(※1)中同協エネルギーシフトとは、省エネ、コージェネレーション(熱併給発電)、再生可能エネルギーへの対応を進め、中小企業の仕事を増やして地域の雇用を増やし、国内に経済や資源の循環を創り持続可能な社会づくりへの取組みをすすめること。

取材/広報委員会
記事/西部地区会 広報委員 吉野雅一

環境にやさしい水道の理念を実現するために〜さいたま市水道局 給水部 配水課 主任 中村嘉孝氏

身近なエネルギーを無駄なく有効に生かす!

 さいたま市では上水の配水場で無駄になっていたエネルギーに着目し、そこに小水力発電施設を設けて電力を生み出す取組みを行っています。埼玉県内各市町村の上水道事業は、かつては個々に水の調達(主に地下水)を行っていましたが、昭和30年代より地盤沈下問題が起きたため、埼玉県が荒川や利根川・江戸川の水を浄水処理し、「水道用水(県水)」として市町村に給水をするようになりました。各市町村は「水道用水」を購入して独自に地下水をブレンドして各家庭・事業所へ供給しています。現在は秩父郡部を除く全域の39市19町へ、5箇所の県営浄水場より給水されています。  \;

 \;  さいたま市では水道用水に約10%の地下水を混ぜて、13箇所の市営配水場、7箇所の市営浄水場から各家庭・事業所に上水を供給しています。各配水場では水道用水を受入れる際に減圧していたのですが、小水力発電機が設置可能な5カ所の配水場では、その圧力エネルギーを生かして水力発電機を回して発電することにしたのです。県の浄水場からは遠距離市町村にも行き渡る圧力で送り出しているため、比較的近距離にあるさいたま市ではその圧力を無駄にせず、エネルギーに転換して環境に寄与しようというものです。
 事業化にあたって、埼玉県が送水エネルギーを、さいたま市は場所を提供し、電力会社が発電設備を設置・メンテナンスを負担、関係する三者で発電収入を分かち合うという協調関係で実施しており、水道料金による設備投資やランニングコストの負担はありません。

 近年の浄水方式など上水道事業には多量の電気を要することから、その消費電力の削減と共に、身近にある無駄になってしまうエネルギーを利用することで、地球環境負荷の軽減に寄与しています。発電量はさいたま市5箇所の小水力発電により247万kW(一般家庭713軒分相当)を生み出し、CO2排出量に換算すると約1300トン程度になり、一般的な森林(杉人工林40年生、1ha当り約1000本)で換算すると147haの年間に吸収するCO2の量に相当するものでした。この取組みは同じ県営水道用水を受入れている他の市でも複数開始に向け準備しているそうです。  \;

            ▲設備の説明をする中村嘉孝主任(右)

住まいの《創エネ》《蓄エネ》《省エネ》化で「低炭素・循環型社会」の構築に取り組む〜(株)藤島建設 代表取締役会長 渡邊弘美氏・新エネルギー事業部 部長 依田 修氏・セールスマネージャー 角 正弘氏

安心安全な住まいづくりを追求した先に環境対応があった

 (株)藤島建設は昭和34年に東京都内で創業、木造住宅建築に特化して昭和46年に埼玉県南東部を商圏に絞り、本社を現在の川口へ移転、常に時代の変化に対応する姿勢を貫いてきました。家づくりへのこだわりを顧客に伝えるために設けられた、藤島建設のショールームとモデルハウスを訪問しました。取材には現在の藤島建設の姿勢を造ってこられた前社長、現在会長の渡邊弘美氏が応じてくださいました。  \;

         ▲左:地中熱システム開発担当 依田氏、右:会長渡邊氏
          両者による地熱利用開発に至る経緯の説明

 多くの木造建築では海外産木材を主に使用する時代が昭和から続いている中で、かねてから国産木材による住宅造りにこだわり、環境事業でも有名な岩手県葛巻町から材木を取り寄せています。渡邊氏は阪神・淡路大震災を機に、住宅の耐震性能について改めて研究をしなおすことにしました。土台・柱・梁などの構造材の接合部を刷新し、過去の工法の弱点を克服することで、より永く安全に暮らすことのできる家づくりを目指します。結果、顧客の資産を長持ちさせることは、地球環境にも優しいことに繋がると考えました。更に、四季のあるわが国では冷暖房を欠かすことができないことから、その空調や湯沸しのエネルギーの削減化にも取組みました。
地域性から地中熱利用に着目し、産官学連携による地中熱ヒートポンプシステムの開発にも取組み、住宅内で消費するエネルギーの半減化を実現し、同業他社の追従を許さない実績を上げています。  \;

          ▲ショールームの地中熱利用ヒートポンプの説明風景

 地中熱は温泉地などの地熱利用とは違い、その土地の年間の平均気温程度の温度が地中数十メートルから200メートル程度まで、1年間を通じて安定した地中温度であることを利用するものです。埼玉県内の地熱温度はおよそ16℃となっており、夏は外気温30℃以上の空気中に廃熱する空気エアコンより、地中に熱を捨てる地中熱エアコンの方が容易であり、また冬は逆に外気温0℃近い空気中から熱を集めるよりも、地中から熱を採取する方が容易なため、エアコンの熱交換エネルギーが半減できるというものです。 
 一般に地中熱利用というシステムでは、安定した地中熱を求める為に、地下30mから100m位の範囲を使うと言われています。四季の寒暖差の影響が少ない深度ということですが、これを実現するにはボーリング費用が嵩み、エネルギー効率は良いが採算性の上では収支が取れるまでにかなり年数を要し、住宅規模の建築ではコスト比重が大きくなってしまいます。そこで、藤島建設では商圏内の地質的特徴から、基礎工事の際に地盤耐力の不足分を鋼管杭を打ち込むことで補っているので、この杭の内部空間を活用して、ボーリング費用を軽減して地中熱に利用する実験を重ねてきました。
 そして、大学と共同研究でデータを採り、杭の深度12mでも地中熱利用が可能であることを突き止めました。地上の年間の気温変化の影響は数ヶ月遅れで12m程度の深度に達するものの、夏冬の熱交換には都合の良い変化であり、支障がないということです。  \;

 地中熱利用は天候や昼夜に関係なく、県内どこでも利用できる再生可能エネルギーであり、安定したエネルギーとして活用できるもので、欧米や中国と比較して我が国ではまだ取組みが遅れています。地中熱利用ヒートポンプの機種もまだ多くは開発されていない中、藤島建設では独自に機器からの開発を行いました。
 建築界では2020年に小規模住宅に至る全ての建築で消費されるエネルギーの削減化が義務化になり、既に2017年度には一定の大規模建築では適応が始まっています。更に2030年に向かいZEH(ネットゼロエネルギー住宅)やZEB(ネットゼロエネルギービル)といった建築内消費エネルギーの収支をゼロ、もしくはマイナスにすることで、地球温暖化対策としてCO2排出量を極力減らす目標も立てられていますが、藤島建設はその点ですでに大きくリードしています。

同友会が目指すエネルギーシフト

 中同協では地球温暖化対策に対する国際的な動きから中小企業の果たすべき環境経営にも取組もうと、2008年定時総会の分科会を受けて「経営理念」に環境対応の1項目を加えよう! と謳われました。
 また、2011年東日本大震災の福島第一原発事故を契機にエネルギー問題が急浮上しました。2013年にはドイツ・オーストリア視察を行い、翌2014年には首都圏でエネルギーシフトの学習会(ドイツ在住のジャーナリスト村上敦氏による報告会)を開催し、欧州の環境対策が地域経済の活性化に結びつけて、豊かな暮らし造りに繋げていることを知りました。
 そして、2016年定時総会では「中小企業家エネルギー宣言」が採択され、同友会会員によるエネルギーシフトへの更なる取り組みが始まりました。
 しかし実態は経営理念に環境経営の項を設けている企業は少なく、エネルギーシフトを新たな仕事づくりという位置づけで取組む会社も極少数であり、推進という状況には程遠い状態であります。
 エネルギーシフトへの道は、先ず、1.徹底した省エネ、身近なエネルギーが無駄にならずに有効に活用する工夫。断熱性能の向上や二次利用。その為にはエネルギーの収支、コスト管理を行う。2.地域資源を生かした再エネの採用。バイオマスなどをコージェネレーション(※2)で利用し、発電時の廃熱も利用することでエネルギー効率を各段に上げる方法を採用する。3.地域分散型の再生可能エネルギーの利用推進でエネルギー自給率を向上させるために、地域毎の仕事づくりに取組み、産官学連携や企業連携によって地域経済循環に繋げる。などが重要な取組みの肝となります。
 第5次産業革命ともいえるエネルギーシフトだが、取組みたくなるには初めに自然環境への思いやり意識の変化が大きな原動力になるのだと思います。紛れもなく地球温暖化は人類がもたらしたものであり、異常気象による被害は年々深刻さを増しています。戻せるのも人類の英断と実践です。

(※2)発電時に発生する熱もエネルギーとして活用する熱電併給設備のこと。発電だけではエネルギー効率は3割程度だが、熱利用もすることで7割以上の効率が得られる。既存の電力会社の送電によりエネルギー効率は15%程度であり、無駄が大きいため、地産地消化の地域分散化が次世代のエネルギー調達として環境に優しいものとなる。

企業家が考えるべきこと

 わが国のエネルギー自給率は僅か6%程度。94%は輸入に頼り、毎年60兆円もの支出をしていますが、これを国内循環に切替えて行き、国内の雇用を増やして経済状態も変えて行こうではありませんか。
 地球環境の危機感をデータで知り、次世代にツケを残さないという決意を実践して持続可能な社会形成も、併せて経営者の責務と言える時代だと思うのです。
 今、各地で市民環境団体などの活発な動きが起きています。市民ファンドによる市民電力会社など、ドイツのエネルギーシフトの経緯にもあった動きです。安い電気の調達だけにこだわると、原発の再稼動や石炭火力発電所の新設(2017年現在、全国に50箇所の新設石炭火力発電所の計画が出ている)という方向性が未だに絶えないのは、先進国では唯一という残念な姿があります。
 一方で木質バイオマス発電事業は大手企業(主に製紙会社や商社)が大規模発電所で順調な運転を開始していますが、エネルギーシフト第1弾でお伝えした秩父市バイオマス発電所のように小規模施設では採算性などの面で上手く行かない事例が多数あり、残念な状況があります。(前回の第3弾でお伝えした上野村の事例は緻密に計画したための成功例でした。)
 主にその原因は、先進国でも有数の森林国家(国土面積の66%が森林で、その内4割は人工林である為、良質な木材が生育)でありながら、近年は森林から木材の産出が僅かであり、利活用が途絶えていることによる林業の衰退です。先人が将来のために植林した木材が海外からの輸入木材の安さに押されて放置林化してしまった訳です。大手バイオマス発電所は経済性優先のため、燃料木材を東南アジアなどからの輸入に頼っています。これでは自国の自給エネルギーとは言えません。
 また、日本は火山列島であり、山岳が多くを占めるために丘陵地も多く、地熱利用や水力発電に向いた環境にありながら、国立公園法や河川法などの規制によって自由な設置利用が進まない実態もあります。実は地熱や小水力発電はとても採算性の良いエネルギー調達方法であり、安定した自然エネルギーなのです。
 もちろん経済性も重要な要素ですが、大原則は環境に優しいこと、安全なエネルギー調達であり、地域資源を有効に活用することが持続可能なものとなる。利害関係や法的な縛りなど政策提言などから問題を解決して、持続可能な社会の構築のために考え行動することが今必要で、それは試行錯誤から生まれてくるものだと思います。中小企業家が遅れることのないようにしたいものです。

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