同友会ニュース−企業訪問

「ものづくり」の未来へ挑む【(有)サンアーム工芸社 取締役 川果夢生】

家業に入って

 \;  有限会社サンアーム工芸社は、大正9年に川果夢生(カムイ)さんの曽祖父が創業しました。祖父である先代社長、叔父である現社長の三代にわたって受け継がれている、いわば家業としての木工製作。現在は、展示会ブース内の木工製作や、テレビ・映画の大道具製作を中心とした事業を営んでいます。
 しかし、カムイさんは家業を継ぐのは嫌だったそうです。それは、子どもの頃に先代社長に手伝わされた「木材を削る作業」が原因だったとか。「どんどん木材を持ってきて削るように言われて。それが嫌でたまらなかった」と話すカムイさん。木工とは全く関係のない会社のサラリーマンとして、社会人としての一歩を踏み出しました。 2010年、当時勤めていた会社を辞め、サンアーム工芸社に入社します。その理由は、「前の会社だと、子どもの運動会に参加できなかったんです。僕は家族第一なので、家族との時間をつくれる会社を作りたかった。でも、創業するだけの力もお金もなかったから、サンアーム工芸社をそういう会社にしようと思った」とのこと。
 しかし、その頃のサンアーム工芸社の経営状態は火の車。職人さんへの支払も滞り、会社は潰れる寸前でした。職人肌の社長はまともに取り合わず、自分がなんとかしなければという危機感から、川口市が主催するセミナーに参加します。そこで新井俊雄さん(川口地区会)と出会い、「経営の勉強をするなら同友会に入った方がいい」と誘われ、入会することになりました。

帰る場所としての経営理念

 2016年、カムイさんは経営指針セミナーを受講、経営理念の成文化に取り組みます。「長い歴史の中で、受け継がれていた理念はあるはずです。しかしそれは漠然としていて、会社の幹として根付いていなかった。会社が潰れそうになったとき、自分達がよるべき幹、つまり『帰る場所』としての理念を成文化しなければならないと思いました」ときっかけを語ります。
 全く経営の勉強をしたことがなかったカムイさんにとって、経営指針セミナーは苦労の連続でした。特に大変だったのは事業計画の作成。当時は毎日のようにピリピリしており、3人の子どもたちすら近寄ってこない有様でした。
 そんな苦労を経て、「つくること」が自社の「帰る場所」であることを再発見します。

『つくること』への想い

 わかりやすくするため、シンプルな内容にした経営理念。そこには、「ものづくり」への敬意が込められています。その理念は、自社の強みである高度な木工技術と、知識・経験豊かな職人達が作り上げる木工製作物だけを対象にしているのではありません。
 サンアーム工芸社には、「腹くちく」の精神があります。「くちく」とは「いっぱいになる」という意味。終戦直後の食べ物がなかった時代、先代社長は「お腹がいっぱいにならなければ幸せにならない」と伝えていました。そんな時代でも、働いている職人達がひもじい思いをしないよう、ちゃんとした食事を提供していました。現社長も、そういった職人を師と仰ぎ、技術を、歴史を継いでいます。
 製品をつくるだけではなく、人をつくり、仲間をつくり、地域をつくり、笑顔をつくる・・。苦しんだ経営指針セミナーを経て、カムイさんには「なんでもつくってやろう!」という覚悟が生まれたのでした。

小さな幸せを

 \;  経営理念をつくることで、自社のあり方を見直すきっかけになったカムイさん。これまで作業をするだけだった工場に、働いている職人の方々や家族、地域の方、ひいては同友会のメンバーまでも呼び、近くで打ち上げている、たたら祭りの花火を見ながらバーベキューを開催しました。木工でも、「カホン」と呼ばれる木製楽器(楽器の上に跨って側面や背面を叩く打楽器)の製作に取り組むなど、これまでにない仕事に取り組んでいます。カホンの製作をきっかけに、保育園のベランダの屋根を作るなど、地域の方々との縁もできました。
 「お客様とか従業員とか関係なく、サンアーム工芸社と関わるすべての人の笑顔をつくってゆきたい。大きな幸せを『つくる』のは無理でも、小さな幸せを『つくり』たい」。創業100年を目前に、カムイさんは語ります。
 昨年、サンアーム工芸社はホームページを作成しました。業務内容欄の最後には、こう書かれています。「小さな幸せと夢製作」と。

【経営理念】

百年前も今日も明日、未来も、私たちは、
「つくります」「作ります」「造ります」「創ります」

【企業概要】

川果夢生(カワサキ カムイ)
(有)サンアーム工芸社 取締役
埼玉県川口市青木4−26−29
TEL 048-255-4098
URL http://sunarm.co.jp

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