同友会ニュース−活動報告

2018年度 全県経営研究集会〜記念講演

12月11日、2018年度全県経営研究集会が開催され、415名の参加登録があり、経営者、来賓、ゲストが川口リリアに集いました。全体会では来賓を代表し、山口栄二・関東経済産業局 産業部長に御挨拶をいただきました。また、懇親会では上田清司埼玉県知事より激励のお言葉を頂き、盛会のうちに閉会となりました。
記念講演の概要を以下に紹介いたします

人を生かす就業規則と経営指針 〜「働く環境づくりのガイドライン」作成プロジェクトからの提起〜

 \; 林 哲也氏 〈香川県ケアマネジメントセンター(株) 代表取締役
(香川県中小企業家同友会 副代表理事・中同協経営労働委員長)〉


所在地/香川県高松市木太町3396-11
設立/1999年
社員数/50名
資本金/1,000万
事業内容/ケアプラン作成・介護保険に関わるコンサル業務

労使見解と自身の体験

 世間一般では働き方が問題になっていますが、今日はこの5年間中同協(中小企業家同友会全国協議会)が取り組んできた「働く環境づくりのガイドライン」をテーマに自社の実践も踏まえてお話しようと思います。
 私は1957年生まれで、会社は1995年創業し、翌年同友会に入会しています。学ぶ中で知った「労使見解」です
が、思えば、私の少年時代の体験にもこのことに関係するでき事がありました。私が中学生だった当時は、労使が対決しストライキが起こるような時代でした。私の父がタクシー会社を経営していたので、当時の多くの企業と同様に労使の対立があり、春闘では自宅に街宣車で訪れた人たちが、父の悪口を拡声器でがなり立てていました。それでも母は「あの人たちも仕事で来ているだから」とタバコを渡していました。後に、労使見解を知り、そのような対決の時代に同友会では、経営指針をつくって社員を信頼できるパートナーとして、指針書を見せて話し合おうとしていたのですから、素晴らしい先見性がある団体だったなと今さらながら思います。

ボロボロの社会人船出

 1980年に就職したのですが当時の大卒の給料は10万円弱でした。ところが、その月給が未払いになるような会社で、結婚を考えていた女性とも、生活の不安定が原因で、破談になりました。その後、明らかに上司が間違っていると思い意見をしたところ、即刻解雇になりました。その時の上司の言葉は「お前らは消耗品。代替えはいくらでもいる」というものでした。解雇された人間の気持ち、皆さん、わかりますか? 私は、この体験を踏まえ、給料をきちんと払うことや、経営者として、責任を持つこと、そして従業員を消耗品と言ってはならないし、思ってもいけないと体験から学んだのでした。

残業、退職の問題からの脱却

 退職後に香川同友会の方に「うちの会社に入ってやり直せ」と誘ってもらい、会計事務所で働くことができたことで、人生をやり直すことができました。その後、開業すると、ちょうど介護保険制度ができたばかりで、バブルのようにどんどん仕事が入りました。しかし会社は毎月2人入れば3人辞めるというような中で、仕事の継承もできないような状況になりました。そのような中、今でも忘れられない出来事があります。ある女性社員が「私の帰りが毎晩10時、11時になり、夫の両親が見るに見かねて食事の用意を手伝ってくれるようになりました」と言ってきたのです。その時私はこう言いました。「それなら安心して残業ができるね」。社員を消耗品のように扱わないと思っていながら、立場が変わるとそのような思考に陥っていました。その女性が職場を去ったことで、私もはっとしました。
 当時は、忙しい中で、これ以上人が辞めないように、残業が多いことや社内の雰囲気がよくないことなどについて、見て見ぬふりをしていましたが、2001年ころ、人の定着について一つの試みを行ったことで、社風が変わっていきました。私が採用すると辞めてしまうと思い、社員に面接に加わってもらったのです。すると、自分たちが採用した人について責任を持って面倒を見てくれたのです。そうやって人が定着し、さまざまな改善をしたことで今は6時にはほとんどの者が帰れるようになりました。

指針作成運動が広がる一方で

 \;  ここから中同協の「働く環境づくりのガイドライン」(以下ガイドライン)についてお話しますが、これは現在検討中であるということをご了解の上、話をさせていただきます。中同協ではガイドラインの検討会議を2015年6月にスタートしています。これは電通の社員さんの自殺を受けての世論が高まる前の動きだったのです。なぜ、この時期に同友会は動きだしたのか。労使見解が発表されて40年の月日が経過する中、経営指針の全社的な実践は本当に進んでいるのかという、全国大会などでの議論を受けてのことでした。そのような問題意識から10年ビジョン作成促進への動きにもなりました。
 第49回定時総会(2017年)には中同協の広浜会長より「経営指針にはきれいごとしか記載していないのではないか」という、発言もありました。「会社が全社的に変革に向かうには指針が必要だが、そこに、本当にすべき生々しいことが課題として組み込まれていることが必要なのに、自社の分析やビジョンがなく、なんとか体裁を整えているだけなのでは?」という趣旨の発言でした。そういった中、ガイドラインについての討議は回を重ね、中同協でのガイドラインの方向性を見い出しました。それは「経営の結果のしわ寄せの労働環境」ではなく「意図した労働環境のビジョン経営」だということです。

給与はコスト?

 このガイドラインは、経営指針の中に含まれる「働く環境」に関連する部分を抜き出し、独立させたものです。中同協が考えるガイドラインの7つの柱(体系要件)は、 1.経営者の覚悟(経営姿勢の確立) 2.社員と「10年後の労働環境ビジョン」を語り合う 3.現状確認 4.未来年表 5.生産性向上計画 6.就業規則の改正計画 7.組織的取組です。 この中で、注目すべき数字データがあります。2016年の中同協の調査によると、回答した3,767社中、就業規則を作成している会社の58.1%、就業規則の定期的な見直しをしている企業の67.3%は最近1年間で業績が上がっているということです。やはり社員さんと定期的に見直しができる会社はよい結果につなげることができる、よい会社だということです。
 さて、ここで皆さんに聞きたいのですが、給与はコストですか?同友会の会員さんで面と向かって「コストです」という人は少ないかもしれません。しかしながら、損益計算書でも人件費はコスト扱いとなっているので、そういう思考になってしまう方もいらっしゃるのではないでしょうか。コストを下げるのが良い会社なら、給料も安ければよい会社となってしまいます。同友会では、そうは考えず、違った見方をしてみませんか?と提起しています。つまり、コストではなく、付加価値そのものと見てはどうですかということです。社員が一丸となって、付加価値を増大させたら、人件費を増やし、社内の収益目標に使われる。そういう見方をしてみてはと提起しています。

少人数でも就業規則は必要

 就業規則の作成とその会社の社員数との相関関係を調べたところ、10人未満の企業は、それ以上の企業に比べ、圧倒的に、就業規則を作成している企業が少ないです。これは「労基署への届け出義務がない」ことを、「作成義務がない」と誤解している傾向があるからではないかと思われます。少人数の企業で、就業規則をきちんと整備することは確かに大変な面があるとは思います。しかし、ここが出来ていないようでは、「人を生かす経営」も出来ていないと、言われてしまうと思います。ですから、一人でも採用したら必ず就業規則を作成してほしいと思います。同友会は経営指針を作成し、経営理念を熱く発信するが、労働環境の整備は二の次で受け身ということでは、社会的にどう見られるかという視点も持ち合わせていかなくてはなりません。もし、ブラック企業とみなされるような企業が、同友会内に一社でも存在したら、一蓮托生とみなされてしまうのです。逆に、そこをきちんと整備することで、働きたいと思ってもらえる選ばれる企業になれるということです。
 そして、同友会らしい「人を生かす就業規則」とは、社員との信頼関係を構築し、新しい次元への相互信頼へと進んでいく取り組みであって「(問題社員から)会社を守る就業規則」とは対極にあるということを理解いただきたいと思います。働き方改革等、改革が進む中で、ぜひ、自社ではどうしていこうか、ということを社内で話し合いしながら、よりよい企業づくりを進めていただけたらと思います。

同友会らしい「人を生かす就業規則」作成上の注意

 (当日の資料より一部抜粋)
1.経営者として「会計」も「人事労務」も「基本のキ」
2.最初の一歩 まず、自らが規則を読む・知る、マネること
3.実情に合わない就業規則は変更する。就業規則の「奴隷」にならない
4.身の丈に合わない、ダウンロードした雛形は使わない
5.地域の専門家を「見出す、育てる、人としてつきあう」ことが大切
6「. 用語」や「表現」は自社言葉もOK

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